アクセンチュアのプロボノチームと連携。でじたる女子チームリーダー育成を通じ、ワークシェアリングモデルの拡大へ

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MAIAでは現在アクセンチュアのプロボノチームと連携し、「でじたる女子」に対してさまざまなコンテンツの提供やキャリア支援を行っています。今回は本プロジェクトに携わるアクセンチュア大寺伸さまと内田みゆきさま、そしてMAIAの黒須優貴と本田友里とで座談会を開催し、取り組みの背景や実施内容、その成果などについてお聞きしました。

ワークシェアリングモデル拡大の要・チームリーダー育成を目指して

―まずはじめに、今回のプロジェクトの背景について教えてください。

アクセンチュア 大寺伸さま
弊社では「コーポレート・シチズンシップ(企業市民活動)」の取り組みをグローバル全体で行っています。会社として、そして一市民として、どのように活動し認知されるべきなのか、そしてさまざまな地域のコミュニティの中でどのような役割を担うべきなのかなどを見据えた活動です。「Skill to Succeed(スキルによる発展)」という統一テーマを掲げ、就業や起業のために必要なスキルを身につけていただくことを活動の軸としています。

日本ではこれまでに、高校生や子どもたちへのSTEM教育や障がいのある方への支援を行ってきましたが、僕たちは経済的自立支援に特化したチームとして、経済的に苦しい状況に陥ってしまう前にスキルを身につけて自立いただくための支援ができないかと模索していました。その中でもやはり女性の方々への支援が必要だと感じ、MAIAさんとの今回の取り組みが始まりました。

ちなみに「コーポレート・シチズンシップ」には、社員がボランティアとしてさまざまな活動に参加する形と、プロボノチームとして通常のプロジェクトと同じように運営を行う形の2種類があり、今回は後者の形をとっています。(※プロボノ(pro bono)とは、職業上のスキルや経験を生かして取り組む社会貢献活動のことです。)

アクセンチュア株式会社 公共サービス・医療健康本部 マネジング・ディレクター 大寺伸さま

―弊社のどのような点に注目いただいたのでしょうか?

アクセンチュア 大寺伸さま
僕たちとしては、スキル習得機会を届けたい方々との接点がないことや、身につけたスキルを活かした仕事に就いていただく出口づくりなどに課題を感じていました。そんな中で、子育てで仕事のブランク期間があるがゆえに選考で落とされてしまう方や、本当にスキルを仕事に活かせるのかと不安を抱えている女性も多いという実情を知ったんです。それならば仕事に就く一歩手前での支援ができないかと考える中で、MAIAさんが取り入れている「ワークシェアリングモデル」がひとつの解決策になると感じました。

ワークシェアリング型就労のイメージ

アクセンチュア 大寺伸さま
ただしこの仕組みを機能させてでじたる女子の活躍の場を拡大させていくには、仕事をコントロールするチームリーダーの育成が必要不可欠です。またキャリアのイメージを描けていないという女性からの声も多かったため、キャリアパスを明確に示す必要性も感じました。僕たちが参加してそれらのサポートを行うことでワークシェアリングモデルを拡大させていけるのであれば、きっと良い取り組みになると感じ、ご一緒させていただくことにしました。

―MAIAとしては、取り組みに際してどのような期待や狙いを持っていましたか?

MAIA 黒須優貴
取り組みが始まった約1年前は、さまざまな自治体と「でじたる女子プロジェクト」を展開しはじめ、多くの女性にリスキリングの機会が提供できるようになってきた頃です。次なる段階として、リスキリングを行った方々にさまざまな案件で活躍していただくための支援が重要なポイントになると考えていました。

株式会社MAIA リスキリングユニット タレントマネジメントチーム マネージャー 黒須優貴

MAIA 本田友里
まさに企業さまからいただく案件において、プロジェクトマネジメントを担える人材が必要でした。企業さまが「本当にしっかりサポートしてもらえるのか」を重視される中で、その根幹を支えるチームリーダーとなる人材を確立することが、ひいてはでじたる女子の皆さまへご案内できる案件数増加のためにも必要不可欠だったんです。本当にいいタイミングでご一緒させていただけて嬉しく思います。

現場の実態も織り込んだ育成コンテンツを作成

―実際にどのような形で取り組みを進めていったのでしょうか?

アクセンチュア 内田みゆきさま
具体的に就労の目標人数や稼働時期、考えうるチーム数やチームリーダー人数などを算出し、MAIAさんにご提案させていただきました。そこからいつまでに何人の育成を行うか目標人数を設定し、チームリーダーの選抜やその後の面談、育成コンテンツの作成なども行いました。また、でじたる女子プログラム卒業後のキャリアの考え方や、今後目指せるキャリアステップを整理し、でじたる女子にお伝えするコンテンツを作成しました。

アクセンチュア株式会社 公共サービス・医療健康本部アソシエイト・マネジャー 内田みゆきさま

―チームリーダーの育成コンテンツには、どのような内容を盛り込んだのでしょうか?

アクセンチュア 内田みゆきさま
スタッフからチームリーダーになるにつれて任される仕事の内容や責任がどのように変化するのか、どんなマインドチェンジが必要なのかなどに焦点をあて、MAIAさんと一緒に作成しました。

MAIA 黒須優貴
MAIAでは木村由紀子さんが中心となり、でじたる女子の特性などを踏まえてコンテンツのチューニングを行いました。

アクセンチュア 大寺伸さま
SAPやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)などの仕事について、まずはそれぞれのスキルを持っている方がどのような仕事ができるのか定義することからはじめ、チームリーダーへの成長の各フェーズでどのようなスキルが必要なのか、木村さんや武田さん(MAIA)と議論を重ねましたね。

議論の中では、木村さんの経験から、実際にワークシェアリングの現場で起きることや、それぞれの生活スタイルを尊重する中で必要になる気配りやコミュニケーションなどについても意見をいただきました。最終的にでじたる女子チームのあるべき姿、チームリーダーのあるべき姿を取りまとめ、そこから逆算して必要なコンテンツをつくっていきました。

現在はまずは運用してみて、フィードバックや実態を踏まえて改善をしているところです。コンテンツの内容だけでなく、総合的にチームをどう育てていくべきかの議論ができたのが非常に良かったです。

―コンテンツについて、でじたる女子の方々からはどのような反響がありましたか?

MAIA 黒須優貴
チームリーダーを目指したい方とそうでない方もいる中で、ミスマッチが減ったのは大きいですね。これまではスタッフ歴の長さなどが選出のポイントになっていて、希望しない方に役割をお願いするケースがどうしてもあったのですが、それがほぼなくなったのが良かったと思います。でじたる女子の方々から「●●さんのように働いてみたいです」という声をいただくようになるなど、明確な基準やステップができたことに大きな意味がありました。

MAIA 本田友里
これまで「キャリアパスを描くのが難しい」という声もお聞きしていたので、今回の取り組みによって、でじたる女子としてのキャリアアップとは何かを一定示すことができて良かったです。「不安だったことが解消されました」などの声もいただいており、良い取り組みになったと感じています。

株式会社MAIA パブリックセクターユニット 女性活躍推進チーム マネージャー 本田友里(リモートでの参加)

多様な事例の中から、自分に合ったキャリアを見つける

―キャリアに関しては、「キャリアモチベーションアップ講座」を開催されたと伺いました。どのような講義を行ったのでしょうか?

アクセンチュア 大寺伸さま
大枠のキャリアステップはつくったものの、やはり人それぞれ期待することや目指す姿は異なります。そんな中で、MAIAさんからの案件を受ける際にはどういった認識で臨んでほしいのかなど、考え方の共有も必要でした。

仕事を長く続けていくのであればスキルアップは欠かせないものであること、そしてその先にどんなキャリアの可能性があるのか、さらにはどんなチームを理想とするのかなどをご提示するところからはじめました。

アクセンチュア 内田みゆきさま
よく縦軸と横軸でキャリアの広げ方を考えると思うのですが、でじたる女子の方々は本当に置かれている環境が人それぞれです。そのためなるべく多くの事例を載せることで、自分に合ったキャリアの考え方を見つけてもらえるよう心がけ、目指したいキャリアに対してどのようなスキルを身につけていく必要があるのかを整理してお伝えしました。

さまざまなキャリアのあり方を学ぶキャリアモチベーションアップ講座(講座資料の一例)

MAIA 黒須優貴
「愛媛でじたる女子プロジェクト」4期終了の頃だったこともあり、大寺さんが愛媛まで来てくださいました。対面で講座を実施したので、卒業間近の方々も実際に働くということを想像しやすく、大きなインパクトがあったと感じています。

MAIA 本田友里
とある案件に関する採用のお話も兼ねての訪問でしたが、その案件に限らず今後のキャリアや働き方をイメージしていただける良い時間になりましたね。

―実際に現地ででじたる女子の方々とお会いして、どのような印象を受けましたか?

アクセンチュア 大寺伸さま
まずはとにかく講座の参加者が多くて驚きました。ここまで本腰を入れて女性の活躍支援に取り組んでいる自治体は聞いたことがなかったので、非常に印象的でしたね。僕たちが抱えていた「支援したい女性たちとの接点がない」という課題に対して、最先端の取り組みをされているなと感じました。

また講座終了後に非常に多くの質問をいただくなど、皆さんの意欲の高さにも驚きました。年齢層も幅広く、お話を伺っていると本当に多様なバックグラウンドを持っている方々であることがわかり、良い機会になりました。

あとは森山さん(MAIA)の「参加者全員を知っている感」がすごかったですね(笑)。あれだけ近い距離感でお仕事をされているからこそ、でじたる女子の方々にとっても安心感があるのではないかなと。

アクセンチュア 内田みゆきさま
キャリア事例の紹介にあたり、MAIAの皆さんにどの方をご紹介すべきか聞いた際のことですが、「たくさんの方の顔が浮かびます」と回答いただいたことがとても印象に残っています。MAIAの皆さんが、一人ひとりとしっかり向き合って日々仕事をされていることに感動しましたし、距離感の近さを私も実感しました。

SAP® SuccessFactors®の活用で、客観的な評価を促す

―さまざまな企業の中で、ワークシェアリングモデルやでじたる女子人材はどのように受け止められているのでしょうか?

アクセンチュア 大寺伸さま
まとまって仕事を遂行できるチームがあり、しかも品質を担保できるのであれば、是非お願いしたいという企業さまが多いのではないでしょうか。

また別の視点で、女性の活躍推進であったりダイバーシティへの取り組みを重要視されている企業さまも増えてきているため、でじたる女子プログラムを通じて、デジタルスキルを習得した人材の雇用は非常に有意義な取り組みになると思います。これらは今、さまざまな企業で経営課題になるほど重要なテーマとなっていますからね。

MAIA 本田友里
そこは私たちもひしひし感じていますね。だからこそ、実際にプロジェクトを進めていくときにIT未経験の方でも活躍できるようなサポートを強化する必要性も感じています。

アクセンチュア 大寺伸さま
でじたる女子の皆さまの活躍によって人手不足を解消していくには、パートナー企業の皆さまと「一緒に育てていく」という形をつくることも不可欠だと思います。企業の方々にとっても、自社の社員だけでなく一緒に仕事をする方々までを広く捉え、その教育も含めて考えていくことが今後は大切になっていくのではないでしょうか。

―活躍の機会を掴んでいくには、どういった視点や心がけを持つことが重要だと思いますか?

アクセンチュア 内田みゆきさま
ワークシェアリングモデルは複数人で業務を分担するものなので、一貫して引き継ぎが行われ、業務が管理されていることが非常に重要です。チームリーダーを中心に、きちんとプロジェクトを軌道に乗せて回していけるか、そして品質を担保して進めていけるか、それができるスキルや視点が求められるのではないかと思います。

MAIA 黒須優貴
あとはマインドの部分で、しっかりと今後の自分の将来を見据えて取り組むことも重要だと思います。実際に成長が顕著な方々は、「とりあえずやってみたい」ではなく「この仕事をやって、その先にこうなっていきたい」と自分がなりたい姿を思い描けていることが多いように感じます。

MAIA 本田友里
「プロジェクトを乗り越えたい」「チームをまとめたい」「お客様の期待に答えたい」といったマインドが大切ですよね。実際にチームリーダーとして活躍されている方は、本当に顧客目線で考えて動いてくださっているのが印象的です。

アクセンチュア 大寺伸さま
SAP® SuccessFactors®(MAIAキャリアサポートプラットフォームにて採用)の活用もキーになりそうです。必要なスキルの定義はできたので、あとはその定義に沿ってでじたる女子のみなさんそれぞれの状態を入力いただければ、ご自身を客観的に見れるはず。そうすれば、次に進むべき方向の検討もできると思います。

育成から就労までを一気通貫で支援し、 キャリアを主体的に形成できる包括的プラットフォーム「MAIA キャリアサポートプラットフォーム」 https://maia.co.jp/news/345/

MAIA 黒須優貴
学生時代以来、明確に自分に対する評価を受け取ったことがない方や、一般企業に務めた経験があっても、きちんとした評価がなかったという方も多いはず。だからこそ、SAP® SuccessFactors®を活用してきちんと評価や振り返りができる仕組みをつくっていきたいですね。

アクセンチュア 内田みゆきさま
実はカウンセリングの強化についても検討しています。「研修合格後」「プロジェクト配属時」「プロジェクト完了時」の3つのタイミングで面談を設け、自分自身で振り返るだけでなく、周囲の方々からのフィードバックを受けられるキャリアカウンセリングの仕組みをMAIAさんと検討しています。こういったことの積み重ねが、成長促進のサイクルを回すことにつながればと願っています。

まずはキャリアや「働くとは何か?」への意識を持つことが第一歩

―最後に、今後の展望について聞かせてください。

アクセンチュア 大寺伸さま
今はまだキャリアステップの大枠をつくった段階なので、今後は何がどうキャリアアップや成長に繋がっているのかをあらためて見極める必要があります。またこれまでのMAIAさんの経験の中で、でじたる女子のチームが円滑に機能するための事例やナレッジが蓄積されているので、それを型化して広げていくこともMAIAさんと考えています。

チームが一定数できるようになったら、 さらに大きく増やしていく方法について是非MAIAさんと一緒に考えていきたいですね。でじたる女子には本当にたくさんの方々がいらっしゃるので、いいサイクルを生んでいければと思います。

アクセンチュア 内田みゆきさま
キャリアモチベーションアップ講座などのコンテンツをさらに展開していくことで、でじたる女子の皆さまからもっと多様なキャリアや生き方の事例が集まってくるのではないかと期待しています。その事例を収集、整理して共有していきたいと思います。

MAIA 黒須優貴
やはりまずはキャリアに対して意識を持っていただくことが第一歩だと考えています。現在でじたる女子コミュニティでもさまざまな施策を行っていますが、「企業に労働力を提供するとはどういうことなのか?」などの意識付けのサポートから取り組んでいきたいと思います。

MAIA 本田友里
私たちとしてはどうしても目の前の課題へ意識が向きがちなところを、大寺さん、内田さんにはいつも一歩引いた視点から客観的な意見をいただいており、とても有難いです。今後事業を拡大していくうえでも、プロボノチームの皆さまとの連携が不可欠です。アドバイスをいただきながら、今後さらに取り組みを広げていければと思います。

取材は2024年7月にアクセンチュアさまオフィスにて行いました(本田はリモートにて参加)

 

◆「でじたる女子プロジェクト」について
MAIAでは日本全国で地方自治体や企業とのコラボレーションを推進し、RPAやSAP、WebデザインなどのITスキル育成・就労支援を行っています。また、プログラムの一部コンテンツについては、個人の目的やペースに合わせて学習できるようサブスクリプション型の「でじたる女子+(プラス)」にて個別に提供を行っています。

 

でじたる女子プロジェクト 公式ページ https://digital-women.maia.co.jp/
でじたる女子+ 公式ページ https://digital-joshi.maia.co.jp/

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