マニュアル改善と進捗共有の徹底で精度をあげ、さらなる貢献を目指す / 京浜急行電鉄さまグループ共通経理基盤構築プロジェクトにアビームコンサルティングさまの下、でじたる女子チームが参画

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MAIAでは2023年1月より、京浜急行電鉄さまのグループ共通経理基盤構築プロジェクトにおいて、アビームコンサルティングさまのもと「でじたる女子」によるチームを組んでデータ移行業務を行っています。今回は京浜急行電鉄さま、アビームコンサルティングさまにお集まりいただいてMAIAのメンバーと共に座談会を開催し、本プロジェクトの取り組みの背景や移行業務のプロセスなどについてお聞きしました。

経理システムの構築にあたり、人員確保が喫緊の課題に

―はじめに、今回のプロジェクトの背景について教えてください。

京浜急行電鉄(以下、京急) 並木さま
「京急グループ総合経営計画」に基づくもので、あらゆる領域でDX推進が求められる中、2020年頃から経理システムの移行に向けた取り組みを始めました。もともとのシステムは20年以上使用した自社開発のシステムで科目・取引先等のコードや一部の仕様についてもグループ各社独自で運用され、経理部門のみならず各社各部門においても業務効率の低さは明確であったため、以前からグループ共通の経理システムの必要性を感じていました。

加えて当時は新型コロナウイルスの流行も重なり、オンラインでの業務遂行への対応が急務となっていた時期です。紙とハンコで行っていた申請業務などをオンライン化するのはもちろん、経理システムと他のシステムとの連携の自動化や、グループ各社の情報の一元管理を可能とし、将来的にはAIなどの高度な技術も採用可能な土台を構築することが求められていました。

京浜急行電鉄株式会社 経営戦略室 新会計システム担当 課長 並木賢洋氏

―そこで、アビームコンサルティングさまへご支援を依頼されたということですね。

京急 並木さま 
いくつかの候補の中から、アビームコンサルティング(以下、アビーム)さまのATS(パッケージ製品のSAPを中心に構築した鉄道業界向け経営基盤)を採用することにしました。他の鉄道会社にも導入実績があるほか、体系的に構築されている点や開発体制が整っている点、そしてSAPの標準機能やアビームさまのテンプレートを活用することでコスト面も見合ったものであったことが、選定の理由となります。

アビーム 井上さま
鉄道会社さまへのSAP導入支援実績はありましたが、ATSとしてSAP S/4HANAバージョンでの導入は初でした。しかし、アビームとしては数多くのSAP S/4HANA導入実績を持ち、ATSのSAP S/4HANA化も事前に取り組んでいたことから、京急様が抱える課題解決の期待に応えられると考え、ご提案させていただきました。

―導入に際しては、どのような課題があったのでしょうか?

京急 並木さま 
今回システム構築・導入にあたり大きな課題となったのは、人員の確保です。新しいシステムを構築し各社に導入するために専属の人員を確保するのは難しく、私や各担当者が本来の業務と兼務しながら進めなければならない状況でした。

京急 堀口さま
当時は京急システム* の立場でのプロジェクト参加だったのですが、ちょうど京急グループ本社の移転という大きなプロジェクトと時期が重なってしまい、人材の割り当てに非常に苦労していました。

* 京急グループのIT専門企業。2024年1月17日に京浜急行電鉄が吸収合併を公表(以下、京急ICT)

京浜急行電鉄株式会社 グループ統括部 グループICT推進担当 課長補佐 堀口竜一氏(写真右端)

「でじたる女子」の決め手は、メンバーの意欲とチーム制

―でじたる女子をパートナーにお選びいただいたのは、どのような理由からだったのでしょうか?

アビーム 井上さま
全部で5点あります。1点目はリソース不足に対する解決策であるということ。課題に対してなるべくコストを押さえた解決策を検討する中で、白羽の矢を立てさせていただきました。

2点目は、弊社の人材管理の仕組みを活かせること。弊社では、プロジェクトに関わった外部協力会社メンバーの情報を「タレントモチベーションプラットフォーム」というプラットフォーム上に蓄積しており、弊社プロジェクトに参画経験のあるでじたる女子メンバーについても実績情報が掲載されています。弊社プロジェクト現場で活躍できる方を輩出可能な仕組みとして、このプラットフォームに載っている人材を活用することもポイントでした。

3点目は、でじたる女子独自のチーム体制です。人材に関しては、事前に面談などをしていてもどうしてもアンマッチが発生してしまうものですが、でじたる女子は複数名ワンチームという形が基本となるため、リスク分散を図ることができます。

4点目は、SAPに関する基礎知識があることです。トレーニングを受けていただいているので、今回のデータ移行作業にあたっても利点になると考えました。

最後5点目は、でじたる女子の皆さまの「やりたい!」という意思ですね。事前の面談の際にも明確にやりたいと意思を示していただいたことが決め手になりました。

アビームコンサルティング株式会社 エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット FMCセクター シニアマネージャー 井上一樹氏(写真左端)

―でじたる女子とのプロジェクトという点で、懸念や不安はありましたか?

京急 藤本さま 
実は、当初はアビームさまを介してのやりとりだったため、我々はでじたる女子メンバーの情報についてまったく知らなかったのです。移行作業開始当初は苦労しましたが、作業を重ねる度にスムーズに推進することができるようになりました。

京急 門馬さま
我々の方ですべての移行作業を行う想定で協力会社さんと一緒に進めていたこともあったのですが、対面でも内容を伝えるのが非常に難しいなと感じていました。そこでアビームさまに新たに協力いただける方をと相談して現在の形になっているわけですが、「対面でも難しいことをリモートでうまくできるのか」という点は、正直不安もありました。

実際にやってみると、メールでのやりとりでもしっかりと意図を汲み取って進めてくださるので、「これなら大丈夫だ」と感じられるようになりました。

京浜急行電鉄株式会社 グループ統括部 グループICT推進担当 主査 藤本拓也氏(奥、左から2番目)
京浜急行電鉄株式会社 グループ統括部 グループICT推進担当 主査 門馬裕氏(奥、左から3番目)

アビーム 井上さま
リモート且つ時短勤務の方々であることはお伝えしていましたが、必要以上に不安にさせることがないよう、でじたる女子という存在は明確にはお伝えしていませんでした。

―プロジェクトの初動は、どのようにスタートさせていったのでしょうか?

アビーム 改田さま
今回に限らず、新しく参画された方にはまず資料を一式お渡ししています。今回は移行作業の手順書があるため、それを元に手を動かしていただき、テスト環境などで事前練習をしてもらうというプロセスをとりました。

ただ我々の用意している手順書が少々属人的で、読み解ける人がなかなかいないという問題もあったため、でじたる女子の皆さまに「誰が見ても同じ作業ができるように」という観点で手順書のブラッシュアップもしていただきました。

アビームコンサルティング株式会社 エンタープライズトランスフォーメーションビジネスユニット FMCセクター コンサルタント 改田智哉氏

MAIA 小塚(でじたる女子)
頂いた手順書は初心者にとっては難しいものでしたが、初めの頃はそれに対して今のように疑問点を聞いたり、改善の提案をしたりがなかなかうまくできていませんでした。井上さんや改田さんには、本当に細かい部分まで教えていただいたり、サポートしていただき、感謝することばかりです。一生懸命に取り組むことだけは大切にして臨む中で、1回目、2回目と移行のサイクルを乗り切り、徐々により良い作業の進め方を見つけることができてきました。

独自のマニュアル整備と進捗管理で、スムーズなデータ移行を実現

―改めて、プロジェクトはどのようなことを目指し、どのような流れで進んでいるのでしょうか?

アビーム 井上さま
京急グループ50社弱というかなりの規模で、数年かけてシステム導入を行っていくプロジェクトです。弊社のATSを活用し、経理業務を中心とした共通経理基盤をつくることを目的としています。現在はグループ各社への展開も半分ほど完了したところで、残り1年ほどを予定しています。

各グループ会社への展開は、半年毎に進めてきました。その間の移行作業のプロセスとしては、移行テスト、移行リハ、最後に本番移行という流れになっており、各作業期間は1か月程度となります。その3回の移行作業を完遂させ、各グループ会社の皆さまに実際に使っていただくことになります。京急ICTさまとアビームとで、担当会社を分担して進める形をとりました。

初めの頃は京急ICTさまと我々とでコミュニケーションをとり、でじたる女子の皆さまからの質問の確認や回答なども我々を介して行っていました。データ移行作業に集中してほしいと考えてこのようにしていたのですが、回を重ねる毎に作業スピードや品質もあがってきたため、現在はでじたる女子の皆さまに京急ICTさまとのコミュニケーションの場に出ていただいて、我々が少し下がるような体制へと変化しています。

―でじたる女子チームでは、どのようなことを大切にして取り組んでいるのでしょうか?

MAIA 小塚(でじたる女子) 
私たちはワークシェアリング型で働いているため、情報や問題をみんなで共有することを大切にしています。誰か一人のリーダーが引っ張るのではなく、みんなでやるという姿勢を持つことですね。その実践のために3つのことを心がけてきました。

1つ目は手順書です。先ほどもありましたが、手順書を読み解くためにMAIA専用の業務マニュアルを別でつくり、誰がやっても同じ順番で同じことができるようにしました。何かあれば誰でも追記・編集して、日々アップデートしています。

2つ目はチーム内での進捗管理です。プロジェクト全体の進捗管理とは別に、MAIAに関する部分だけを取り出し、各メンバーの状況を可視化するようにしました。誰と誰が似た業務をしていて、誰に負担がかかっているのか、誰の進捗が遅れていてフォローを必要としているのかなどの情報を、なるべくメンバー全員が見えるようにしています。

3つ目は日々改善を行っていくことです。手順書を変更するアイディアやより良い役割分担のアイディア、要望や意見などをこまめにメンバー間でヒアリングして集約し、手順に関してはアビームさまにも提案をさせていただきました。

株式会社MAIA 小塚美穂(でじたる女子)

京急 藤本さま 
MAIAさまのチーム内の勤務時間については我々からは見えない部分ではありましたが、スケジュールや進め方についての確認や提案をきめ細かくしてくださるので、時短勤務による制約など感じることなく移行作業を進めることが出来ました。

MAIA 武田
これまでMAIAで担当させていただいたSAP業務は、テストやマニュアル作成など期間に猶予があるものが多かったのですが、データ移行となると作業期間もタイトですし、ひとつのタスクの停滞が後続タスクにも影響を及ぼしてしまいます。ワークシェアリング型且つリモートでの業務で、どのように情報共有を図りながら進めていくか試行錯誤の連続でしたが、アビームさまの手取り足取りのご支援と京急さまのご理解に助けられています。

作業の精度向上により、スキルアップのチャンスが生まれた

―直近では、でじたる女子メンバーも会議に参加させていただいたり、京急さまと直接コミュニケーションを行うこともあると伺いました。新しい業務をお任せいただいた背景をお聞きできれば嬉しいです。

アビーム 井上さま 
移行作業を何度も重ねたことで、作業のクオリティもスピード感もあがり、期日前に完了することが多くなってきました。それによって生まれた時間をどのように活かしていくべきか、スキルアップやこの先のことを考えたときにこのプロジェクトの中で何をお願いすると良いのかなどについて、武田さんとお話ししました。MAIAさまとしてもまとまった形での契約ができる体制を構築していきたいとの希望を伺い、目指したい姿をこのプロジェクトで実現していただければと考え、体制を柔軟に変えていくことにしました。

MAIA 武田 
データ移行業務においてはどうしても繁忙期と閑散期が繰り返されるものですが、その中でも閑散期に何かしら業務があるとメンバーもモチベーションを維持しやすいですし、我々としてもチャージ対象として換算することができるため、このような機会をいただけるのは非常にありがたいことです。

株式会社MAIA 取締役 武田耕平

アビーム 井上さま
我々としては京急さまに迷惑をかけず、且つでじたる女子の皆さまに働きやすい環境をつくれるかどうかが、大きなポイントだと考えていました。

実は昨年8月に移行リハーサルの期間が設けられていたのですが、思い切って京急さまに「お盆休みがほしいです」とお願いしたところ、「実は私たちも取りたかったんです」と作業の中断を快諾いただいたんです(笑)。またそれもあってか、年末年始にも多めに休止期間を設けていただいて。我々の働き方にも柔軟に対応してくださり、大変ありがたく思っています。

京浜急行電鉄 堀口さま 
やはりプロジェクト自体がブラックではいけないと思いますし、そういった部分をざっくばらんに話し合いながら進めていける関係性づくりは皆さま非常に長けていらっしゃいます。作業の振り返りを行う週2回の夕会などでも、我々が気づけていない部分を小塚さんが指摘してくださったり、整理して質問を投げかけてくださるのですが、それらは私たちにとっても気づきにつながるのでとてもありがたいなと思っています。

MAIA 小塚(でじたる女子) 
質問することは本当に細かい部分ではありますが、皆さまがこれだけ向き合って答えてくださるので、私たちとしても非常にやりがいを感じています。

コミュニケーションを重ね、チームとしての関係性を築いていく

リモート時代の働き方を考え、実践できるプロジェクトに

―プロジェクトは残り1年ほどありますが、ここまでの振り返りや、今後の広がりの可能性についてお聞きできればと思います。

京急 並木さま 
私たちはこれまでリモートで業務をしたことがなかったのですが、そんな中でもしっかり導入を進めていただき本当にありがとうございます。今後導入が完了する会社が増えると、今度は保守が必要になります。将来的にある程度ルール化されて業務が整備されてきたら、またでじたる女子の皆さまに業務をお願いする可能性も大いにあるのではないかと思います。

デジタル活用という領域はリスキリングに最適です。企業としても時短やリモートでの勤務環境を整えることで、さまざまな事情からの職務復帰を受け入れやすくなりますし、生産性そのものも高まります。会社としてリモートでの勤務を受け入れていくことが必要な時代へと変わりゆく中で、今回のプロジェクトは働き方の根本を見直す良い機会になりました。

アビーム 井上さま
京急さまに関しては現在SAP導入の段階ですが、今後さらに自動化や効率化が必要になってくると考えています。でじたる女子の中にはSAP女子とRPA女子がいますので、今後はRPA女子にバトンを渡し、SAPでは手が届かなかった部分をRPAで対応していくということもあるのではないかと考えています。

また並木さまのおっしゃっていた保守業務に限らず、何かしらの業務のBPOなどを請け負うようなことも選択肢としては考えられると思います。今回の実績を元に、この先もパートナとして京急さまの発展をご支援できればと思います。

MAIA 小塚(でじたる女子) 
このプロジェクトに参加しているでじたる女子のメンバーは、私含め7名おります。メンバーの中には沖縄の離島から参加している者もいるのですが、「自分が住んでいる環境だけではこんな仕事に巡り合えなかった。大きなプロジェクトの一員になれてとても感慨深い」と言っていて、本当にその通りだなと。さまざまな場所にいるさまざまな立場の方々と協力しながら働いていくことの可能性を、今回のプロジェクトでは強く実感しました。

おかげさまで移行作業にも随分慣れてきたので、今後はそこに付随する業務はもちろん、エラー解析のスキルをあげるなど自ら学び取りながら、さらなるチャンスにつなげていければと思います。

取材は2024年2月、アビームコンサルティング株式会社さまの本社にて

 

◆「でじたる女子プロジェクト」について
MAIAでは日本全国で地方自治体や企業とのコラボレーションを推進し、RPAやSAP、WebデザインなどのITスキル育成・就労支援を行っています。また、プログラムの一部コンテンツについては、個人の目的やペースに合わせて学習できるようサブスクリプション型の「でじたる女子+(プラス)」にて個別に提供を行っています。

 

でじたる女子プロジェクト 公式ページ https://digital-women.maia.co.jp/
でじたる女子+ 公式ページ https://digital-joshi.maia.co.jp/

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