企業のDX推進や業務改革が進むなかで、求められる人材活用のあり方は変化しています。スキルを持つ人材を個別に活用するだけでなく、一定規模の体制で業務を継続的に進め、品質と進捗を安定させることが求められる場面が増えています。
特に、バックオフィス業務、シェアードサービス、各種オペレーション業務のように、複数の業務が同時並行で発生し、一定の品質を保ちながら継続運用する必要がある領域では、人材の確保だけでなく、業務の切り分け、チーム編成、マニュアル整備、進捗管理、コミュニケーション設計までを含めた運用力が欠かせません。
MAIAでは、女性デジタル人材の育成と就労支援を行うだけでなく、育成した人材をチームとして編成し、企業の実行フェーズを支える業務推進体制の構築・運用にも取り組んでいます。
本記事では、ある大規模業務プロジェクトにおいて、MAIAが約60名規模の女性業務委託チームをどのように編成し、オンボーディング設計・業務設計・運用管理を行い、継続的な業務推進体制を構築していったのかを紹介します。
約60名規模へ拡大した、継続型の業務推進プロジェクト
本プロジェクトは、一定期間にわたり継続的な業務推進が求められる大規模プロジェクトでした。MAIAの統括のもと、育成した女性デジタル人材が業務委託メンバーとして参画し、複数チームに分かれて日々発生するさまざまな業務に対応していく体制です。
プロジェクトは数名規模からはじまり、業務量の増加や体制拡大に伴い段階的にメンバーが増員され、最終的には約60名規模・複数チームによる体制へと拡大していきました。
扱う業務は、マニュアルに沿って進める定型的な作業だけではありません。作業内容の理解、関係者との確認、手順の整理、状況に応じた判断が必要な業務も含まれていました。そのため、MAIAに求められたのは単に「人を集める」ことではありません。必要だったのは、業務の種類や難易度を見極め、メンバーの対応可能領域や参画条件に応じてチーム体制を設計し、処理状況を可視化しながら品質を保って業務を進めることです。
つまり、実行人材の配置にとどまらず、業務設計・チーム構成・進行管理を含めた業務推進体制そのものを構築する必要がありました。
MAIAの対応方針:オンボーディング設計・業務設計・運用管理を一体で進める
プロジェクトが拡大していく過程では、人数の増加と業務量の増加が同時に進みました。一方で、初期段階では、チームとしての役割やゴール、業務範囲、判断基準が十分に整理されているとは言い切れない状態もありました。この状態で大規模な業務推進を行おうとすると、さまざまな迷いが生まれ、人数が増えるほど管理は難しくなります。
そこで重視したのは、個々のメンバーの経験や判断だけに依存しない体制をつくることでした。大規模な業務委託チームを安定的に運用するためには、意欲やスキルを持った人材を集めるだけでは不十分です。新しく入った人が業務を理解できる仕組み、業務を適切に切り分ける設計、チームごとの役割、進捗や処理状況を把握する管理方法、困りごとを吸い上げて改善につなげるコミュニケーションの流れが必要になります。
MAIAは、本プロジェクトにおいて次の3つを一体で整えていきました。
1、オンボーディング設計
新しく参画するメンバーが、業務の背景や進め方を理解し、一定の品質で作業できるように、オリエンテーションやマニュアル、業務ごとの手順を整備していきました。
2、業務設計
多数ある業務を分類し、MAIAで対応できるものと対応できないものを切り分け、チームとして無理なく業務を受けられる状態を整えました。
3、運用管理
業務の処理状況の可視化、チームごとの対応体制の確認、リーダーとの情報共有、メンバーの参画条件に応じた業務設計、会議体の再設計などを通じて、チーム全体として継続的に成果を出せる状態を目指しました。
この3つを同時に進めることで、MAIAは約60名規模のチームを「人の集合」ではなく、「業務を安定して進める体制」へと整えていきました。

オンボーディング設計:新規参画者の業務理解を支えるマニュアルとオリエンテーション
大規模な業務委託チームでは、すべてのメンバーが最初から業務に精通しているわけではありません。特に本プロジェクトでは、業務範囲が広く、専門用語や独自の進め方も多く存在しました。新たに参画するメンバーが、属人的な説明だけに頼らず業務を理解できるようにするためのオンボーディング設計は、体制拡大における重要なポイントでした。
その中でも特に大きな取り組みとなったのが、セットアップ業務の確立です。実際の業務が始まる前に、作業内容や進め方を整理し、関係者と合意し、業務を開始できる状態とする工程です。通常の業務の上流に位置する工程であり、難易度も高い一方で、当初は進め方が十分にマニュアル化されていませんでした。
そこでMAIAの統括担当者は、関係チームと協力しながらセットアップ業務の仕組みを整理し、マニュアル化を進めました。
意識したのは、「やったことがない人が見ても分かる資料」にすることです。全体像や確認すべき項目、関係者とのやり取り、不足しがちな知識、専門用語の理解などを整理し、誰が担当しても一定の流れで進められる状態を目指しました。必要な業務知識が不足している場合にはクライアント側に確認し、受託業務の遂行に必要な前提情報としてチームに共有する流れも整えました。
なお、マニュアルは一度つくって終わりではありません。業務が変われば更新が必要です。担当者が変わっても引き継げる状態を保つためには、作業担当者自身がマニュアルを更新し、ナレッジを残す意識を持つ必要があります。

本プロジェクトでは、1つの作業に対して複数名が内容を把握できる状態をつくり、業務の属人化を回避しました。担当者が変更になった場合や、新しいメンバーが入った場合でも、業務が止まらないようにするためです。
オンボーディング設計とは、業務を理解し、実行し、改善し、次の人へ引き継げる状態をつくることです。その意味で、本プロジェクトにおけるマニュアル整備やオリエンテーション設計は、チームを拡大するための土台づくりでもありました。
業務設計:タスクを切り分け、対応できる業務範囲を明確にする
チーム運用を安定させるうえで、次に重要だったのが業務設計です。
本プロジェクトでは、多数の業務メニューが存在していました。中には、MAIAの業務委託チームで対応できるものもあれば、アクセス権限や業務特性の関係で対応できない依頼もありました。しかし初期段階では、依頼が来てから「この作業は対応できるのか」を確認する場面もあり、権限がないために作業できないことが後から分かるケースもありました。
そこでMAIAの統括担当者は、業務メニューを整理し、MAIA側で対応できる業務と、別の担当者が担うべき業務を切り分けていきました。約120〜140種類に及ぶ業務メニューを確認し、アクセス権限、業務内容、対応可能性を踏まえて、どの拠点・チームで対応するのが適切かを整理していったのです。
この整理によって、「MAIAが責任を持って対応できる業務を見極めて受ける」状態へと移行していきました。

同時に、今後どのような業務が来る可能性があるのかを把握し、あらかじめナレッジを蓄積することも可能になりました。業務の種類が見えていれば、必要なナレッジを蓄積し、チーム単位で対応しやすい業務領域を設計していくことができます。
また、依頼される業務の中には、手順が属人的になっているものもありました。担当者の経験や柔軟対応によって成り立っていた作業は、マニュアルに十分反映されていないことがあります。実際の運用がずれていたり、プロジェクト固有のやり方が明文化されていなかったりする場合もありました。MAIAの統括担当者はこうした業務を一つひとつ確認し、標準手順と個別ナレッジを突き合わせながら、再現性のある業務として整備していきました。
本プロジェクトでは、この業務設計を進めることで、依頼を受けた後に迷う時間を減らし、対応可能な業務に集中できる状態をつくっていきました。
運用管理:業務処理状況を可視化し、チーム全体のバランスを整える
約60名規模のチームを運用するうえでは、業務量と体制のバランスを継続的に把握することが欠かせません。
本プロジェクトでは、業務の依頼・進行・完了を1件ごとに記録する「チケット」単位で処理状況を確認していました。そのため、チーム全体としてどの程度のチケットを処理できているのか、業務領域ごとの処理状況や体制上のボトルネックを確認しながら、運用改善を進めていきました。
特に重視したのは、処理状況の可視化です。チケットの完了状況、業務ごとの処理量、チームごとの対応状況を確認することで、業務量に対して体制が適切か、特定の業務やチームに負荷が偏っていないかを把握できるようにしました。また、処理状況に偏りが見られる場合にはその背景を確認し、要因を整理しながら、業務の切り分けや手順整備、チーム内での役割分担を見直していきました。
このように、MAIAでは成果物であるチケットの処理状況とチーム全体の対応力をもとに運用を設計しました。これにより、受託業務として求められる品質とスピードを保ちながら、継続的に業務を進められる体制を整えていきました。
多様な働き方を前提にした業務設計
MAIAのチーム運用において特徴的なのは、メンバーごとに対応可能な業務領域や参画の前提条件が異なることです。まとまった時間で対応しやすい業務を担えるメンバーもいれば、曜日や時間帯が明確な定常業務の方が対応しやすいメンバーもいます。家庭の事情、体調、居住地、ライフステージなど、一人ひとり背景は異なります。

この多様性は、MAIAの就労支援における大きな価値である一方、大規模業務を運用するうえでは丁寧な設計が必要になります。
たとえば、比較的柔軟に対応できるメンバーは、複数の作業を並行して進めやすく、納期までの期間を見ながら、作業順を調整しやすい場合があります。一方、曜日や時間帯に制約のあるメンバーは、突発的なリクエスト業務や、いつ発生するか読みにくいタスクには対応しづらい場合があります。
そこでMAIAの統括担当者は、業務の性質に応じて担当領域を設計しました。
発生タイミングが読める定常作業や、曜日・時間帯がある程度決まっている固定的な業務は、参画条件に制約のあるメンバーでも対応しやすい領域です。一方で、リクエストベースで発生する業務や、複数タスクを並行して進める必要がある業務は、より柔軟な対応が可能な体制で受けられるようにするなど、業務と体制の相性を見ながら調整しました。
また、リクエスト型の業務は、発生が読みにくいという難しさがあります。依頼が来れば対応が必要ですが、来ない場合には作業が発生せず、チーム全体の処理状況にも偏りが出ます。そのため、定常作業とリクエスト作業のバランスを見ながら、業務量が特定の領域に偏りすぎないように調整することも重要でした。
多様な働き方を前提にしたチーム運用では、単に人員数だけで体制を考えるのではなく、業務の発生タイミング、対応に必要な知識、納期までの期間、複数名でのナレッジ共有のしやすさなどを踏まえて、業務体制を設計することが重要です。こうした設計により、メンバーが力を発揮しやすい環境を整えながら、チーム全体として安定的に業務を進められる状態を目指しました。
リーダーとメンバーを支える、コミュニケーションサイクルの設計
大規模チームでは、情報の流れを設計することも重要です。人数が増えるほど、現場で起きていることが見えにくくなり、困りごとや改善点が上流に届きにくくなります。
本プロジェクトでも、初期段階では、リーダーが課題を抱え込みやすい面がありました。自分のチームで何が起きているのかを把握していても、それをどこに相談すべきか、どのように改善につなげるべきかが明確でないと、リーダー自身の負担が大きくなります。
そこでMAIAの統括担当者は、MAIAの統括、チームリーダー、クライアント側責任者の間で、情報が循環する会議体を設計していきました。
たとえば、週の初めにはMAIAの統括とチームリーダーがミーティングを行い、方針や共有事項を確認します。その内容をもとに、チームリーダーが各チーム内で必要な情報を共有し、業務進行上の確認事項や改善点を整理します。さらに、月に1回、MAIAの統括・チームリーダー層とクライアント側責任者が、業務範囲や進行上の確認事項を整理する場も設けました。受託業務を安定して遂行するために、業務上の前提情報や確認事項をすり合わせる場として位置づけています。確認した内容は、MAIAで整理したうえでチーム運用に反映しました。
コミュニケーションにおいて大切にしたのは、単に報告を増やすことではありません。今起きていることの共有、必要な協議、チームへの還元、そして確認のサイクルを回すことで、課題を早期に把握し、リアルタイムに改善へつなげられる状態をつくっていきました。
成果:大規模チームを、継続的に成果を出す実行体制へ
本プロジェクトを通じて、MAIAは約60名規模の女性業務委託チームを継続的に運用し、複数チームによる同時対応、業務品質の安定、進行状況の可視化を実現してきました。約120〜140種類に及ぶ業務メニューを整理し、対応範囲を明確にしたうえで、マニュアル整備、処理状況の可視化、会議体の再設計を進めました。これにより、約60名規模の複数チームが、受託業務を継続的に進められる体制へと移行していきました。
特に大きな成果は、次の3点です。
1、個人依存の運用ではなく、チームとしての運用を実現
担当者の経験や善意だけに頼るのではなく、業務範囲、マニュアル、複数名でのナレッジ共有、チームごとの役割整理を進めることで、再現性のある運用を目指しました。
2、多様な働き方を前提にしながら業務推進力を向上
まとまった時間で対応できるメンバー、曜日や時間帯に制約のあるメンバーなど、さまざまな参画条件のメンバーがいる中で、業務の性質に応じた体制設計を行い、働きやすさとチーム全体の処理力向上を両立させました。
3、改善につなげるコミュニケーションサイクルの構築
MAIAの統括、チームリーダー、クライアント側責任者の間で情報が循環する仕組みをつくり、困りごとを早期に把握し、運用改善へ反映できる状態を整えました。
こうした取り組みにより、チームは単なる人材の集合ではなく、企業の業務遂行を支える組織的な体制として機能するようになりました。
大規模業務推進プロジェクトに活用できる、MAIAの実行支援モデル
本事例は、特定のプロジェクトに限らず、大規模な業務推進体制が必要なさまざまな領域に応用できる知見を含んでいます。たとえば、DX推進の実行フェーズ、バックオフィス業務のBPO、シェアードサービスの運用、業務改革後の定着支援、デジタルツールを活用したオペレーション業務などでは、一定規模の人材を継続的に動かす力が求められます。
その際に重要なのは、単に人材を集めることではありません。
・業務を分解する
・担当範囲を明確にする
・未経験者でも理解できるマニュアルを整える
・業務処理状況を可視化する
・多様な働き方に合わせて業務体制を設計する
・情報が上流へ届き、改善につながる会議体をつくる
これらを一体で設計して初めて、大規模チームは安定して機能します。
MAIAは、女性デジタル人材の育成に加え、こうした業務設計・運用管理の知見を組み合わせることで、企業の実行フェーズを支援しています。多様な事情を持つ女性たちが、自分らしい働き方を実現しながら、企業の重要な業務を支える。そのためには、個人の努力だけではなく、力を発揮できる体制と仕組みが必要です。
MAIAはこれからも、オンボーディング設計・業務設計・運用管理を一体化した支援を通じて、女性の就労機会を広げるとともに、企業の業務推進を支える実行体制づくりに取り組んでいきます。
◆ITプロフェッショナルの実働チーム「Share V(シェアヴィー)」について
MAIAでは、大企業から地方自治体まで、大小問わず幅広い分野で課題解決の支援を行っています。MAIAがフロントに立ち、全国2,000名規模のプロフェッショナルネットワークを活かして、業務整理、運用設計、デジタル化など最適な支援体制を提供いたします。
「Share V」詳細はこちら https://digital-joshi.maia.co.jp/sharev/