MAIAは2024年、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社(以下、EYSC)さまのご支援のもと、「でじたる女子プロジェクト」などのSAPラーニング環境の刷新を行いました。本記事では、その環境構築プロジェクトについてご紹介いたします。
「でじたる女子プロジェクト」でのつながりから始まったSAPラーニング環境構築プロジェクト
─ まずはじめに、今回のプロジェクトの背景について教えてください。
EYSC 岩上 健人さま
弊社では「EY Ripples」というCorporate Responsibility(社会貢献)プログラムを行っています。⾃らの知識・スキル・経験を生かして、より良い社会の構築に貢献することを目指すもので、次世代教育・就労支援、社会的に影響力のある起業家との協働、持続可能な環境への取り組みという3つの分野にフォーカスして活動を行っています。
次世代教育・就労支援としては、中高生向けに会計講座やキャリア教育、大学生向けにデザイン・シンキング・セッションや寄附講座などを開催してきましたが、女性の就労支援についてもどのような取り組みができるか模索していました。
MAIAさんは、まさにそういった女性活躍支援を軸にさまざまな事業を展開されており、弊社では「でじたる女子プロジェクト」のタレント採用パートナーとしての連携の他、「かごしまデジタル女性(おごじょ)プロジェクト」ではビジネススキル向上のための教育コンテンツ提供を行うなど、いくつもの取り組みを一緒に行ってきました。
EYSC 岩上 健人さま
そんな中で、代表の月田さんからSAPのラーニング環境に関する課題を伺ったのが、今回のプロジェクトの始まりです。ちょうどSAP Basis(*)のインフラチームが立ち上がったばかりということもあり、「EY Ripples」の取り組みの一環として環境構築を担当することになりました。李さんと趙さんはSAP Basisの環境構築経験者であり、そのスキルを生かしてもらうべく今回のプロジェクトに加わってもらいました。
* SAP Basis … SAPのアプリケーションがスムーズに機能するための技術基盤。SAPはOS上にアプリを構築するのではなく、OS上にBasisというミドルウェアをインストールし、その上にアプリを乗せるという構造になっています。
MAIAならではの特殊な利用用途を踏まえて設計
─ SAPのラーニング環境について、どのような点が課題でしたか?
MAIA 中崎 夏美
「でじたる女子プロジェクト」や「でじたる女子+」の拡大に伴い、そのラーニング環境をより安定して提供するために、自社でSAPの環境を持つ形へ切り替えることになりました。そのためにはSAP Basisが必要なのですが、同じSAPと言えどもSAP Basisは非常に専門性が高く、知識や経験のあるメンバーの不在が課題として浮かび上がりました。検討するにも分からないことが多く、専門的な技術と経験を有するEYSCさまにご支援をお願いしました。
─ どのようなプロセスでプロジェクトを進めていきましたか?
EYSC 岩上 健人さま
まずは「どれくらいの人数が、どのように使うのか?」などMAIAさんの要件をヒアリングし、構築方針の検討を行いました。方針が固まったところで実際に構築を行い、引き渡しののち、運用し続けていただくためのマニュアル作成やレクチャーを行いました。
─ 構築方針として、主にどのような点について検討を行いましたか?
EYSC 岩上 健人さま
SAP Business Oneのようなパッケージにするのか、もしくはゼロから構築するのかというところから検討を始め、最新のSAP S/4 HANAにするのか既存でお持ちのSAP ECCにするのか、ライセンスはどうするのかなど、MAIAさんとSAP社との間に入って調整も行いながら、最終的にMAIAさん特有の事象を考慮した構築方針を組み立てました。一般的な業務システム環境の構築と異なり、「本番環境は不要、ラーニング環境のみでOK」というMAIAさんのケースは非常に特殊でした。
EYSC 李 美咲妃さま
通常の接続人数とセミナーなど開催時の接続人数に大きな差があり、ピーク時には200人以上が同時にアクセスする可能性もあると伺いました。一般にはない特殊な事象なので、その一時的な負荷がどれほどのものになるのか、コスト面も含めて特に綿密に考慮・検討して構築しました。
EYSC 岩上 健人さま
2台のサーバーを利用することにしたのですが、想定している利用像に合わせた契約形態を採用することで、コストパフォーマンスに優れた設計を実現できました。
─ 弊社の業務特性に合わせた設計をしていただいたのですね。他にもMAIA特有の要件などはありましたか?
MAIA 中崎 夏美
「でじたる女子プロジェクト」の学習で扱うデータはあくまで架空のものなので、実際の企業のようなセキュリティレベルは必要ない点も大きな相違点かもしれませんね。
EYSC 李 美咲妃さま
そうですね。セキュリティレベルが上がると運用コストや難易度も上がってしまうため、MAIAさんの要件とコスト、運用しやすさ、そしてSAP Basisの経験者がいらっしゃらない点も考慮して、できる限り誰でも運用できるような設計を行いました。かなりお任せいただいて提案・構築を行ったので、とても有意義に取り組ませていただきました。
「分かっていること」を捨てるのが良いマニュアルづくりの第一歩
─ SAPの環境構築においては、どのようなことを大切にしていますか?
EYSC 李 美咲妃さま
構築と運用を、それぞれ段階を分けて考えるようにしています。構築段階では技術やシステムに精通したメンバーが設計を行いますが、運用段階で実際に業務を行うのは別のメンバーであることがほとんどです。MAIAさんの場合もSAP Basisの経験者がご不在のため、運用しやすさを考慮して構築を行う必要がありました。
マニュアル作成は趙さんが行ったのですが、誰が見ても分かるような丁寧なマニュアルづくりと運用への引き継ぎを心掛けてもらいました。
─ マニュアルやレクチャーでは、どのような部分がポイントでしたか?
EYSC 趙 楡桐さま
SAP Basisの知識や経験のない方が見ても操作できるようにマニュアルを制作し、実践的なレクチャーを行いました。実はレクチャーの前には、社内でリハーサルも行っています。実際のレクチャーはオンラインで行うため、その際に起こりやすい音声・映像の遅延などにも対処できるような話し方や見せ方を心掛けました。
EYSC 岩上 健人さま
僕らがクライアント役として趙さんのレクチャーを聞いて、分かりにくかった点や気付いたことをフィードバックしながら、限られた時間の中でしっかり伝わるように内容のブラッシュアップを行いました。
MAIA 中崎 夏美
マニュアルもレクチャーもとても分かりやすくて、本当にありがたかったです。おかげさまで今のところ、何事もなく運用できています。
EYSC 岩上 健人さま
ありがとうございます。先ほど李さんも申し上げた通り、やはり構築時から運用のことを考えておくことが重要です。開発工数だけでやる・やらないを決めるケースもありますが、システムをこの先数年使うことを前提とした時に、どちらが良いかという視点で判断することが大切だと思います。
そして、構築メンバーから運用メンバーへの引き継ぎも重要です。構築段階でどのようなやり取りがあったのか、運用メンバーにも余すことなく共有・引き継ぎすべきです。その上で、今回のようにクライアントがSAP Basisの経験をお持ちでない場合は、クライアントの理解の度合いに合わせてマニュアル内容を調整する必要もあります。
そしてもうひとつ。マニュアルが特に参照されるようなアクシデントが起きた場合、現場は相当に混乱しているはずです。そんな状況でも使えるマニュアルであるためには、一瞬で理解できるものでなければいけません。頭を使って考えなければ分からないようなものでは、マニュアルとして役に立たないのです。
─ でじたる女子の中にも、業務でマニュアルづくりを行っている方が多数います。応用できるようなアドバイスがあればお願いします。
EYSC 李 美咲妃さま
大切なのは「相手目線」だと思います。構築やレクチャーを行うメンバーは、どうしても内容を十分に理解してしまっています。運用する人やレクチャーを受ける人が、何も知らない状態で見ても理解できるものをつくるためには、自分が業務を通して「分かっていること」を捨てることが重要です。
また、詳しい方が相手であれば詳細まで説明することもありますが、そこまでの知識がない方の場合は難しい言葉は控えるなど、相手の理解度に合わせた調整を行いましょう。
SAPの習得がキャリアの可能性を広げる理由とは
─ 最後に、SAPのスキルを生かして活躍されているお2人についても聞かせてください。なぜSAP、そしてSAP Basisに興味を持ったのでしょうか?
EYSC 趙 楡桐さま
SAP、特にSAP Basisの環境構築を行うスキルは非常にニーズが高く、市場価値が高いからです。扱い始めたきっかけは、前職でSAPの活用が部門の方針だったから…ではありますが、やはり高いニーズやトレンドという点は念頭にありました。
EYSC 李 美咲妃さま
私はもともとERPパッケージ(企業の基幹業務を統合的に管理するシステム)自体に興味を持っていました。どんな業界や会社でも必要なものだからというのが主な理由ですが、SAPはその中で最も強いブランド力を有しています。業務アプリケーションより技術面に携わりたかったため、前職時代からSAP Basisを軸として経験を積んできました。
─ SAPというツールの理解や習得は、女性のキャリアにおいてどのような可能性や広がりをもたらすと思いますか?
EYSC 李 美咲妃さま
女性に限らずではありますが、SAPはあらゆる方のキャリアに可能性を与えてくれるものだと思います。SAPは世界のさまざまな企業で使われているからこそ、高い需要と競争力を持っていますが、使いこなすにはシステムのことだけ分かれば良いわけではなく、業務についても理解する必要があります。SAPを習得するということは、リーダーシップを身に付けたり、サプライチェーンや財務、人事などに関しても理解したりするということであり、だからこそキャリアのチャンスが広がるのだと思います。
EYSC 趙 楡桐さま
SAPを学べば、事業会社側でそのスキルを生かして働くこともできますし、私たちのように支援側として働くこともできるなど、チャンスや選択肢は本当に広がると思います。
EYSC 李 美咲妃さま
SAPを学んでおけば、他のITツールを使う際にもその知見や経験を生かせる点も大きなメリットかもしれません。ベースとなる考え方は共通しているので、一度学べば他のCRMツールなどを扱う際にも生かせるはずです。ぜひSAPを習得して、働き方の可能性を広げていただければと思います。
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EYSCさまのご支援により実現した今回のSAPラーニング環境の刷新により、より安定した環境で学習を行えるようになりました。SAPのスキルを身に付けることで、李さまや趙さまのようにITの現場で活躍できる可能性も広がるはずです。MAIAでは今後も引き続き、女性が自分らしく働ける未来を目指し、SAPをはじめとしたITスキル習得の機会を提供してまいります。
◆「でじたる女子プロジェクト」について
MAIAでは日本全国で地方自治体や企業とのコラボレーションを推進し、RPAやSAP、WebデザインなどのITスキル育成・就労支援を行っています。また、プログラムの一部コンテンツについては、個人の目的やペースに合わせて学習できるようサブスクリプション型の「でじたる女子+(プラス)」にて個別に提供を行っています。
でじたる女子プロジェクト 公式ページ https://digital-women.maia.co.jp/
でじたる女子+ 公式ページ https://digital-joshi.maia.co.jp/